華麗なる偽装結婚
「……」
「さあ、行こう。
君を連れて行きたい場所があるんだ」
私はただ黙っていたが彼に背を押されて歩き出した。
――「社長、奥様、行ってらっしゃいませ」
並んで歩いて正面玄関フロアーを横切る。
その時総合受付の女性社員数名に揃って頭を下げられ面食らう。
「ご苦労様。行って来るよ」
社長は軽く手を上げて彼女達に笑顔で答える。
車に乗り込んでから彼に言う。
「社長、奥様と呼ばせるのはやめて下さい。
鳥肌が立ってしょうがないわ」