華麗なる偽装結婚


「……」

「さあ、行こう。
君を連れて行きたい場所があるんだ」


私はただ黙っていたが彼に背を押されて歩き出した。




――「社長、奥様、行ってらっしゃいませ」

並んで歩いて正面玄関フロアーを横切る。
その時総合受付の女性社員数名に揃って頭を下げられ面食らう。


「ご苦労様。行って来るよ」

社長は軽く手を上げて彼女達に笑顔で答える。



車に乗り込んでから彼に言う。

「社長、奥様と呼ばせるのはやめて下さい。
鳥肌が立ってしょうがないわ」





< 172 / 252 >

この作品をシェア

pagetop