華麗なる偽装結婚


さわっ、と一瞬、湖から吹きすさぶ風が私と社長の髪を揺らした。

………私はただ、彼の後ろに立ちその背を眺めていた。


「……駄目だな、公私混同もいいところだ。

俺がそんな風に思う権利などない。
今思えば、会社のためだなんて自分勝手な理由で君に嘘の結婚を迫った。

ひどい……話だよね。

……君にした事は、一生かかっても償いきれないな」


「……そんな」


社長は向こう向きのまま呟くように静かにそう言った。

何故だか、切なくやるせない気持ちに押し潰されそうになる。


何だか……、彼が、悲しく見えてくる。

会社の運命をその背に負い、愛してもいない女と結婚してそれを償わなければいけないと思っている。






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