華麗なる偽装結婚
「………。
君ね。
………いくら何でもそんなにセンス悪くないから。
……何なの、変な置物って……。
……分かった。
とりあえずその、変な置物だけはやめるよ……、
安心して」
ムスッとした社長の横顔をチラリと盗み見る。
長い睫毛が縁取る瞳。
薄く滑らかな唇。
サラサラと柔らかな髪。
あなたを初めて見た瞬間からその全てに惹かれたわ。
全てが私のものだったなら。
その心さえも。
「……阿美子?」
私の視線に気付いた社長が不思議そうに私を見て首をかしげた。
…………あ。
私の目から流れる涙が落ちては風で乾いていく。