華麗なる偽装結婚
私は堪らなくなって向きを変えるとテラスから部屋の中に向かって歩き出した。
ガシッ。
………え…。
ギュッ。
その瞬間、社長が後ろから私を捕まえ抱き締めてきた。
彼の髪が私の首にさらさらと触れてくる。
「……何でもないのに涙が出るの…?
ごめんな。
……ごめん。
俺が悪いよね。
無理矢理結婚させたりして……。
せめて、君に何かをしてあげたい。
偽装だけど今は阿美子の夫なんだ。
君を今だけは幸せにしてあげたいんだ」
「………」