華麗なる偽装結婚
………どうかしている。
偽装だからこそ彼女はこうして俺の妻としてここにいるのに。
本当は帰って阿美子と過ごせば自分が制御出来ないからマンションには戻らなかった。
そんな事を言えば彼女は俺を怖がり逃げ出すかも知れない。
「……もう二度と言わないよ。
君と普通の夫婦になれるとは思っていない。
君のいう通りこれには終わりがある。
余計な感情は邪魔だよね。
君が迷惑に思うような発言はもうしないから」
「……はい。そうして下さい」
………どうして彼女に偽装結婚など申し込んだのだろう。
手近で言いやすかった?
女性としての魅力が全くなかった?
いや、………違う。
むしろ阿美子は初めて会った瞬間から俺に強い警戒心を抱かせた。
俺はそんな自分を戒めるように彼女に魅力がないといい放ったんだ。
彼女を傷付けてまでも自分を正当化した。