華麗なる偽装結婚
「……社長……?」
彼女が、彼女の腕を掴んだまま動かない俺の顔を覗き込んで俺を呼んだ。
「………」
君は……、涙が溢れ出すほどに俺が嫌なのか。
そんなに早く離婚したいのか。
「……社長…痛い…」
阿美子の腕を掴む手につい力が入る。
………俺と別れた後は、陸のところに行くのか。
どうして。
阿美子は俺の妻なのに…、陸に渡さなければいけないのか。
会社を守りきっても、阿美子を奪われたなら俺は結局、陸に一番大切なものを渡す事になる。