華麗なる偽装結婚
「………阿美子……、
夫婦でいる間は……、
君をこうして大切にするから」
「…は……。
何で……」
彼女が俺を見てはいなくても、
この全てが偽りで恋愛の真似事だとしても
……君を、愛しているから。
……カタッ。
その時ふと聞こえた物音に二人で顔を上げた。
「………あ…、何だ兄さん、帰ってたのか」
こちらに向かって陸が歩いてきた。
「……何でここに?」
何故、陸が……?
状況がいまいち理解出来ない。
唖然とする俺達に陸が笑いながら話す。
「いや、近くを通りかかったから少し休ませてもらおうと思ってさ。
以前借りた合鍵も持ってたし。
いやー、俺はいつもタイミングが悪いな。
二人の邪魔ばかりしてるね。
だけど………ずいぶん仲良しだね。
まあ新婚だから無理もないか。
だけど、時々妙によそよそしくしてるよね」
「……何が言いたいんだ」
「いや?別に何も?
どうしたんだよ、俺何か気に触る事でも言ったかな。
ただ、二人が仲がいいのか、悪いのか、よく分からないからさ。
……ね、阿美子さん。
もし兄さんとうまくいかなかったら俺のとこに来てよ?」