華麗なる偽装結婚


そう言ってもう一度、どちらからともなく、引き合うように唇を重ねる。

今二人に必要なのは、嘘で塗り固められた言葉などではない。


共に過ごすこのわずかな限りある時間と、お互いの肌の温もり。


彼女もきっと俺にこう望んでいるだろう――。

――「阿美子……、君が欲しい」



「………え」


啄むように唇を何度も合わせながら、思わず彼女に告げていた。


そう。
阿美子の全てを俺のものにしたい。


息苦しいほどに求めて止まない激情。

君に対する欲望が、溢れて止めどなく流れていく。






< 200 / 252 >

この作品をシェア

pagetop