華麗なる偽装結婚
六・探り合い



――「やあやあ、阿美子さん。
元気にしておったかな。
なかなか時間が取れなくてついにはこうして会社に押し掛けて来てしもうたわい。


おう、怜。
どうかな、新婚生活は。
こんな美人な嫁さんの前じゃ緊張して大変じゃろう」


にこやかに佐倉会長が社長室に入ってきた。

「おじい様。
ようこそいらっしゃいました。

ご苦労様です。
資料はこちらに取りまとめてございます」


私はテーブルに並べた決算報告書を手で差し示して応えた。

社長はデスクから応接テーブルに座り直しながら佐倉会長の言葉をまるで無視して書類を手に取って眺めている。


「そんなものは後でいい。
…怜。
阿美子さんもこちらに来て座りなさい」


私は言われた通りに社長の隣に浅く腰掛けた。






< 202 / 252 >

この作品をシェア

pagetop