華麗なる偽装結婚
「わしももう、年だからな。
一日でも早くひ孫に会いたい。
どうかね?
予定はないのか」
「「ありません!」」
二人で声を揃えて言う。
そう。
ないわ。
これから先、ずっと。
さっきは車の中で目眩を起こしそうなキスをされた。
だけどきっとあれは陸さんに対しての怒りから。
苛立たしさを私にぶつけてきただけの事。
「おじい様。
そんなお話なら何も業務時間中でなくとも。
また改めてお時間をおっしゃって下さい。
夕飯などいかがですか」
「いや。
早く聞きたいのじゃ。
是非とも頑張って早く会わせてもらいたい」
…………。
な。
私は赤くなって俯いた。
そんな私を見て会長はクスッと笑う。
「いやあ。可愛いのぅ、阿美子さんは。
本当に怜のような者に嫁いできて勿体ない」
「……おじい様。
何を……」
「わしの孫の中でも一番女癖の悪い怜よりも、まだ陸のような真面目な男の方が阿美子さんには似合うような気がするがね」
「陸には渡さない!」
突然社長がガタッと立ち上がって叫ぶように言った。
「社長!」