華麗なる偽装結婚
私はそのまま化粧室に飛び込むと洗面台に駆け寄り鏡を見た。
……これまでの私とは別人のように生まれ変わった自分。
明るいカラーの髪に、緩く巻いたウェーブ。
桃色の柔らかなイメージのブラウスに花柄の膝丈のタイトスカート。
胸元にはキラキラ光る星屑を散りばめたようなデザインのネックレス。
全て社長の見立てた、新しい自分。
きっと鏡に映るこの人は、私であって私ではない。
私にはこのような華やかさはない。
彼の側にいるための切符を手に入れただけの、堅物で生真面目な女。
彼を一番近くで見ているはずが、実は一番遠い場所まで流れて来ているのかも知れない。