華麗なる偽装結婚


俺の驚く顔を見ながらじいさんはニヤリと笑った。


「年寄り扱いしおって。
…孫の猿芝居に踊らされるほど、残念ながらまだ落ちぶれてはおらん」


「…そ、そんな…だって」


「会社はお前と文彦がこれからも好きにやりなさい。
潰そうが儲かろうが、わしはもう知らん。

経営不振の原因を取り払ってやったんだ、もう、わしに出来る事はない。

お前達がもしも嫌なら別の会社を、と思ったがそれも必要なさそうじゃ」


………は。


「ちょっと待ってよ、前に幹部を全部辞めさせたのは……」

「………あいつらは乗っ取りを計画しておった。

人のいい文彦が騙されそうだったのでな」


!!!!

「そんな。
じゃあ………」


「言っておくが、お前らには敵はおらんぞ。

兄達も可愛い弟のためにずいぶん色々と手を回したのじゃぞ。


…………だがな。
恋敵は別じゃ。
陸が誰を好きになろうと、わしにはそれを止める権利も力も残念ながらないのでな。

それだけは自分で解決せねばならん。


そう言えば………、さっき駐車場で陸の車を見かけたな…………」


「……!!」






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