華麗なる偽装結婚
「……君は……いつだって頼りに出来る優秀な秘書だった」
社長はそっと身体を起こすとベッドの隅に移動して座った。
「……?」
私も起き上がり、はだけた胸元をそっと直した。
「…阿美子ちゃんとだけは薄っぺらな男女の関係になどなりたくはなかったんだ。
だから君に興味がないフリをした」
背中を向けた彼の表情は分からない。
「社長…?」
彼は何が言いたいのだろう。
「…結婚の話が出た時、君の顔が浮かんだ」
「……優秀な秘書だから断らないと?」
……「……違うよ。
阿美子ちゃん以外には考えられなかったからさ」
「え」
「……陸が君に興味があると分かったとき、何としても渡してはならないと思った」