華麗なる偽装結婚
ハウスウェアに着替えて部屋を出る。
辺りに立ち込める優しい夕飯の香り。
子供の頃から一族で会社を経営する我が家では、家庭料理を作る家族などいなかった。
いつもシェフの呪文のような名前の料理を一人で食べていた。
そっとキッチンを覗くとエプロン姿の阿美子が忙しそうにキッチンを右往左往していた。
――明日、きちんと話そう。
今更だけど指輪を買ってきて、きちんとプロポーズしよう。
俺は君が好きなんだ、と。