華麗なる偽装結婚
「はい。お土産」
小さな箱を彼女に手渡す。
「え。本気だったんですか。
まさか本当に買ってくるなんて」
驚いた彼女に笑いながら言う。
「うん。だけど陸と出かける君を見かけた時は窓から一瞬投げ捨てようか迷ったよ」
「………。
やだ。やめて下さいよ。
何でもないのに。
…十八階から降ってきたなら誰かに当たると大怪我だわ」
クスクス笑いながら彼女が言う。
「君が俺以外の男と出かけるから。
俺は悪くない」
「もぅ……。
子供みたいな事を言って」
笑い合いながら思う。
これは嘘なんかじゃない。
偽装でもない。
明日、本物に変えてみせるから。
じいさん、ひ孫はもう少し待ってくれよ。
「…変な置物じゃないから」
「……。
社長……。
根にもつタイプだったのね。
まだそんな事を……」
「ああ。そうだよ。
センスが悪そうに見られていた事も覚えてるよ」
「………」
もう自分を良く見せる必要なんてない。
ありのままの俺を見ていてほしいから。