華麗なる偽装結婚
――ふと目が覚めた。
月明かりが部屋を仄白くぼんやりと映している。
「………」
ふと胸元を見る。
阿美子が俺の胸に頬を寄せて静かに規則正しい寝息を立てている。
あれからどれだけの間、愛し合っていたのだろう。
ますます彼女に対する愛情が深まっていく。
俺はその髪をそっと撫で、軽くキスをしてから彼女を抱き直し身体を密着させた。
誰にも阿美子のこの寝顔は見せない。
もう彼女は心身共に俺のものになった。
他の女になどもう欠片の興味もない。
阿美子がいればいい。
俺は何を恐れていたのか。
彼女に手を伸ばせばいつでもこうして腕に抱く事が出来たのに。
「………阿美子、愛してる」
そっと呟いてから俺は再び眠りに落ちた。