華麗なる偽装結婚
『あ、あったぞ。
佐々木だよな?
えっと、…090、32………』
………君を、絶対このまま手離したりなどしない。
俺はまだ、何も伝えてはいないんだ。
――「ありがとう、達郎。
ごめんね?朝早くから起こしてしまって」
「いいよ。お前の迷惑には慣れてる」
「何よそれ。ひどい」
クスクス笑いながら運転する達郎を見ながら思う。
社長とはきっと友達にもなれない。
こんなに心穏やかに過ごせた事なんてないもの。
彼の運転する車に乗った時は息の止まるようなキスに頭が朦朧としたわ。
私の気持ちを見透かすように次々に甘い誘惑を仕掛けてくる社長を恨めしくさえ思った。
もう、そんな気持ちに振り回される事もない。