華麗なる偽装結婚
北海道の叔母の牧場へ向かおう、と突然思った。
自然に囲まれて家畜の世話をしたなら少しは気持ちが落ち着くような気がした。
「妙子叔母さんによろしくな。
またいつか俺も行きたいよ」
空港で私を降ろして達郎が車の窓から顔を出して言った。
「うん。きっといつかね。
伝えるわ」
「まあ、……阿美子がこのまま北海道まで行けたら、の話だけどな」
「……え?」
「何でもない。気を付けてな」
「うん。ありがと」
「おう」
達郎の車を見送ってから荷物に手をかける。
振り返り前に進もうとした私は、次の瞬間に足を止めた。