華麗なる偽装結婚
「……資料に、決裁書に…。
こんなに短時間で出来る訳ないじゃん。
ちょっとは手伝ってくれてもいいのに…」
ブツブツ言いながら社長はデスクに戻り
ガタッと半ばなげやり気味に椅子に腰掛けた。
「昨日の午前中の空いた時間に本来ならばなさるべき仕事でした。
社長が『尚美ちゃん』と長電話なさっていなければ今はもうすでに終わっていた事です。
…では、私はこれで。
失礼致します」
それだけ伝えて軽く頭を下げると、私は社長室をサッサと後にし、扉をバタン、と閉めた。
隣接する秘書室に戻り自分のデスクに腰かけて、フウッとため息を漏らす。