華麗なる偽装結婚
「彼女達に偽装結婚なんて頼める訳がないじゃない。
離婚してくれないでしょ。
終わりのある事だからこそ、俺に惚れるはずのない君にしか頼めないんだよ」
「……………そうですか。
分かりました。
ご期待通り、しっかり務めさせていただきますわ」
「うん。よろしくね、奥様」
「…………」
返事をしない彼女の手をそっと握る。
「…何ですか」
そんな俺を彼女が怪訝な顔で見上げる。
「例え芝居とはいえ、夫婦になるんだ。
ましてやじいさんを始め、一族全ての人間に本物だと思われないといけないからね。
本物ではないけれど…これくらいは必要だよね」