華麗なる偽装結婚


「彼女達に偽装結婚なんて頼める訳がないじゃない。

離婚してくれないでしょ。
終わりのある事だからこそ、俺に惚れるはずのない君にしか頼めないんだよ」


「……………そうですか。
分かりました。
ご期待通り、しっかり務めさせていただきますわ」


「うん。よろしくね、奥様」

「…………」

返事をしない彼女の手をそっと握る。

「…何ですか」


そんな俺を彼女が怪訝な顔で見上げる。

「例え芝居とはいえ、夫婦になるんだ。
ましてやじいさんを始め、一族全ての人間に本物だと思われないといけないからね。

本物ではないけれど…これくらいは必要だよね」






< 79 / 252 >

この作品をシェア

pagetop