華麗なる偽装結婚
「そうか。それはありがたい。
寛大な妻の気持ちを遠慮なく受け取ろう。
だけど………君を本気にさせる話は無しにはしないからね。
どうせなら楽しく暮らしたいんだ」
「………ご勝手に。
あなたを決して好きになったりはしないわ」
「………」
その時。
「社長、ホテルニューオリンズ佐倉に
ご到着致しました」
運転手が社内スピーカーから告げてきた。
「ああ、ありがとう。
さ、シンデレラ。
変身の時間だよ」
「………え?」
俺は先に車を降りて彼女に手を差し出した。
「え、あの、社長?」
「社長、は、なし。
怜でいいよ、婚約者なんだから。
さ、阿美子、降りて」
「あ…あの…」
おろおろする彼女の手をさっと掴んで引っ張り降ろす。
そのままその手を引いて歩き出す。
「あの」
彼女は手を離そうとしているのか、ぐぐっと力を込めてきた。
「駄目だよ。
ここには陸がいるんだ。
もう、ゲームは始まってるんだよ」
「…………」