華麗なる偽装結婚
俺が立ち止まってそう言うと彼女は一瞬、身体を強張らせたがやがてフッと笑って俺を見上げた。
「……分かったわ。
………怜。
あなたの人選が正しかった事を証明するわ」
「……あ、…ああ。
た、……頼むよ」
俺は彼女からさっと目を逸らすとまた彼女の手をしっかりと繋いで歩き出した。
…………何なんだ…、今の気持ちは。
何でこんなに動揺するんだよ。
彼女が俺の名前を呼んで、笑顔を見せただけの事。
こんな事は何でもない事のはずだ。
だけど俺の心臓は早鐘を打っていた。
人選………か。
もしかしたら、俺は、………
…………一番頼んではならない相手を
選んでしまったのかも知れない。
今さらそう思っても
もう遅いのだが。