愛を教えて
卓巳は仕事を理由に拒否し続けているが……。

家に戻れば、叔母に金を掴まされたメイドが、ベッドにまで忍び込んでくることにうんざりしていた。



「まあ、ほんとよねぇ。あなたのお母様みたいに、妊娠を盾に邸に乗り込んで来られるつもりかもしれませんわよ。お兄様のときは幸か不幸かご自分のお子様でしたけど。卓巳さんは……ねぇ?」


尚子は思わせぶりに卓巳の身体をなめるように見る。


(下半身ばかり凝視するのは止めてくれ!)


怒鳴りたい気持ちを抑え、深呼吸すると卓巳は叔母に向かって答えた。  


「お心遣いありがとうございます。太一郎くんのように複数の女性に乗り込まれないように注意します」


この程度の嫌味であれば許されるだろう。

卓巳はそう思ったが、叔母のほうは違ったらしい。


「まあ、失礼ですわよ! 若いのだから仕方ありませんわ。誰かさんとは違いますもの!」


(矛盾だな。僕が不能なら、乗り込まれる心配など初めからないじゃないか)


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