愛を教えて
卓巳を探し出し、藤原を継ぐように説得したのはこの皐月だ。
高徳は死の直前まで卓巳を認めようとしなかった。いや、きっと墓の下でも『旦那様』と呼ばれる卓巳を苦々しく思っているのに違いない。
卓巳の思考を遮るように、皐月はため息と共に口を開いた。
「それは困りましたね。この家はごく普通の家ではなく、あなたの置かれた立場も一般の会社員とは違います。わたくしはあなたに、この家を任せたいと思っているのよ。そのためにも妻は必要です。ただ……」
皐月が万里子を見て、卓巳の嫁に相応しくないと判断した場合、結婚は認められない。
「しかし、おばあ様」
「万一の場合でも、彼女には相応の慰謝料をお支払いして、諦めていただきます。よろしいですね」
皐月の言葉に卓巳は黙り込んだ。
そんな卓巳の様子をどう思ったのか、皐月は懇願するように付け足した。
「卓巳さん、どうかわたくしを失望させないでくださいな。わたくしにはもう、あなたしかいないのですから……」
「……はい、わかっています」
皐月におもねる態度は見せず、卓巳は憮然と答えたのであった。
高徳は死の直前まで卓巳を認めようとしなかった。いや、きっと墓の下でも『旦那様』と呼ばれる卓巳を苦々しく思っているのに違いない。
卓巳の思考を遮るように、皐月はため息と共に口を開いた。
「それは困りましたね。この家はごく普通の家ではなく、あなたの置かれた立場も一般の会社員とは違います。わたくしはあなたに、この家を任せたいと思っているのよ。そのためにも妻は必要です。ただ……」
皐月が万里子を見て、卓巳の嫁に相応しくないと判断した場合、結婚は認められない。
「しかし、おばあ様」
「万一の場合でも、彼女には相応の慰謝料をお支払いして、諦めていただきます。よろしいですね」
皐月の言葉に卓巳は黙り込んだ。
そんな卓巳の様子をどう思ったのか、皐月は懇願するように付け足した。
「卓巳さん、どうかわたくしを失望させないでくださいな。わたくしにはもう、あなたしかいないのですから……」
「……はい、わかっています」
皐月におもねる態度は見せず、卓巳は憮然と答えたのであった。