愛を教えて
万里子は冗談か本気かわからず、絶句している。


『あの……おばあ様は何かおっしゃっておられましたか? お叱りでは……』

「祖母より、問題は叔母たちだな。僕は叔母たちに疎まれている。かなり酷いことを平気で言う人たちだから、君にも遠慮はしないだろう」


卓巳とって敵は祖母の皐月ではなく、叔母ふたりである。


彼女らは条件つきで高徳の遺産を相続しており、古参の重役に祭り上げられ、取締役会の席まで持っていた。

高徳の代に重用されてきた古参の重役たちは、敦か太一郎を将来社長にすべく画策している。彼らは、卓巳では傀儡にできないことを知っているせいだ。


「叔母たちは君にしつこく尋ねると思う。嫌な思いをするかもしれないが……できる限り僕が守るつもりだ。ぜひ、来て欲しい」

『ええ、もちろんです。何を言われても私は平気ですから』

「あのふたりは君の想像以上の……」



――ガタンッ!


ドアの向こうから音が聞こえた。

卓巳は携帯電話を抱えたままドアの前まで行き、一気に開け放った。


< 131 / 927 >

この作品をシェア

pagetop