愛を教えて

(1)結婚宣言

挫折と絶望、それを上回る強烈な恋慕の情を初めて味わった翌朝、卓巳は朝食の席でみんなに宣言していた。


「今週の日曜日に、結婚を前提に交際中の女性を家に招きました。皆様にも紹介したいので、ご都合がよろしければご在宅ください」


「そう、お招きになったの。では、お会いしなくてはね。時間はいつです?」


あれほどハッキリ、『反対する』と言いながら、皐月をおくびにも出さない。

卓巳もそんな皐月の茶番に付き合う。


「ランチタイムにしました。ああ、浮島……日曜のランチはひとり分多く頼むよ」


執事の浮島は丁寧に頭を下げ、「承知いたしました」と答える。



「まあ、どんな女性かしら。楽しみですわね、お姉様」

「楽しみ? 不安の間違いでしょう? 最近の女子大生なんて、水商売の女性より破廉恥なことをしていると聞きましてよ」


楽観的な和子の言葉に、姉の尚子は声を尖らせる。


「あら、尚子おば様。つい最近まで私も女子大生でしたのよ」

「ええ、そうですわね。静香さん、あなたのことも色々と聞いてますわよ。いくら血が薄いとはいえ、いとこ同士の結婚は感心しませんわね」


尚子は姪の静香が卓巳と一緒になることを快く思っていない。


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