愛を教えて
苦笑しながら答える卓巳に「別にそういう意味じゃ」と万里子は必死になって言い訳をする。


そして、エントランスホールの正面に、家中の使用人が見事に整列していた。

使用人たちの年代は様々だが、そのほとんどが女性。彼女たちはホテルの客室係を思わせる、グレーのワンピースに白い前掛けを着用していた。


そんな中、執事の浮島が一歩前に出る。

そわそわする若い使用人たちとは違い、彼は普段とまるで変わりがなかった。


「お帰りなさいませ、旦那様」

「ああ、彼女が千早万里子さんだ。失礼のないように取り計らってくれ」

「はい。――ようこそお越しくださいました。執事を務めます、浮島と申します。御用の際は遠慮なくお申し付けくださいませ」


相変わらずニコリともしないが、ぞんざいな態度でもない。しかし、間違ってもフレンドリーには見えない対応だ。

万里子の気後れが大きくなるのでは、と卓巳は心配するが……。


「はじめまして、千早万里子と申します。どうぞよろしくお願いいたします」


そう言うと万里子は楚々として頭を下げた。


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