愛を教えて
「ええ、苦労しましたわ! お父様はわたくしたち姉妹をとても可愛がってくださいました。わたくしが戻って来たときも、快く迎えてくださいましたわ。わたくしの息子のことも、将来は二~三の会社を任せたいとまでおっしゃって!」

「……はあ」

「それが、あんなに早くお亡くなりになってしまって! とても悲しい思いをいたしました。だって、この家にわたくしたちの味方は、先代しかおられなかったのですもの」


万里子に向かって身を乗り出し、まくしたてられても、それ以上どう答えればいいのかわからない。



「そうですよ。お父様が生きておられたら、卓巳さんはこの家に入ることもできなかったでしょう。それが今では当主気取りなんですから」


和子と違い、最初から敵意丸出しの声が響いた。


「こちらが、和子さんのお姉さん、尚子さんだ」


ソファに座っていた尚子は唐突に立ち上がった。

そして、入り口近くに立つ万里子のそばまで、つかつかとやってくる。


妹に比べると神経質なのかもしれない。和子の半分……は大袈裟だが、かなりの痩身だ。体中から針を突き出しているような刺々しさを感じる。


「千早万里子です、どうぞ……」

「卓巳さんにいくら積まれたの? 正直におっしゃいな!」


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