愛を教えて

(4)嫉妬

「お優しい万里子様だもの、ご結婚されてもあたしのことはお許しいただけますよね?」

「それは……どういう」


トクンと万里子の胸が鳴った。
鼓動は少しずつ早くなり、嫌な予感が頭をもたげる。


「こちらにお勤めするようになって二年になるんですけど……。一年くらい前から、卓巳様に特別なお手当てをいただくようになったんです」

「特別な?」

「いやだわ、万里子様ったら。夜中のご奉仕に対するお手当てに決まってるじゃありませんか」


万里子の中に電話を切った直後に感じた不安が蘇る。
あのとき聞こえた女性の声。卓巳はメイドに夜食を頼んでいた、と言った。


「あの……卓巳さんのお部屋に、夜食を持って行かれたりすることはありますか?」

「まあ、夜食だなんて!」


あずさの声からメイドらしさは消え、万里子の顔色が変わるのを楽しんでいるような声になる。


「あたし、ひとりで待ってるのが寂しくて……。つい、万里子様とのお電話を邪魔してしまったんです。あのあと、卓巳様からひどく叱られました」


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