愛を教えて
自分でも無意識のうちに右の手首を撫でていたようだ。
確かに、少し違和感がある。
「失礼」
「あ! あのっ」
卓巳に手を取られブラウスの袖を捲られた。すると、手首にくっきり赤い痣ができている。
それは、太一郎に掴まれた指の痕だった。
「太一郎だな……あの野郎」
卓巳は唸るように奥歯を軋ませた。その音が万里子の耳に届き、食堂での激昂ぶりを思い出させる。
「大したことないですから。気にしないで」
「痛むんじゃないのか? すぐにも医者を呼ぼう」
「いえ、とんでもない! 本当に大丈夫です。これくらい、すぐに消えますから」
「……すまない。本当にすまない。二度とこんな目には遭わさない。約束する。だから……結婚の話を白紙に戻すことだけはしないで欲しい」
「そんなこと。そのために、ここに来てるんですから……」
万里子の胸にあずさの姿が浮かんだ。
(もし、彼女の告白が事実だったら……私は約束を破ることになってしまう)
そんな思いが彼女の声を小さくした。
確かに、少し違和感がある。
「失礼」
「あ! あのっ」
卓巳に手を取られブラウスの袖を捲られた。すると、手首にくっきり赤い痣ができている。
それは、太一郎に掴まれた指の痕だった。
「太一郎だな……あの野郎」
卓巳は唸るように奥歯を軋ませた。その音が万里子の耳に届き、食堂での激昂ぶりを思い出させる。
「大したことないですから。気にしないで」
「痛むんじゃないのか? すぐにも医者を呼ぼう」
「いえ、とんでもない! 本当に大丈夫です。これくらい、すぐに消えますから」
「……すまない。本当にすまない。二度とこんな目には遭わさない。約束する。だから……結婚の話を白紙に戻すことだけはしないで欲しい」
「そんなこと。そのために、ここに来てるんですから……」
万里子の胸にあずさの姿が浮かんだ。
(もし、彼女の告白が事実だったら……私は約束を破ることになってしまう)
そんな思いが彼女の声を小さくした。