愛を教えて
「身体を起こしてくれていい。……少し話そう」
メロディの合間にベッドの軋む音が聞こえ、唐突に静寂が訪れた。卓巳がCDを止めたのだ。それに気づき、万里子も慌てて起き上がる。
卓巳は万里子のいるベッドには戻って来ず、そのままラウンドチェアに腰を下ろした。
「君用に、同じダブルベッドを作らせている。納品までに二週間はかかるそうだ」
「こんなに大きくなくても。ひとりで寝るんですから」
「広い部屋なんだ、気にすることもないだろう。奥のウォークインクローゼットにも君のスペースを増築中だ。他に何か希望はあるか?」
「花嫁道具はどうしましょう? 父はきちんと揃えたいようなんですが……」
「必要なら揃えればいい。だが、お父上にも夢があるだろう。叶えてあげればどうだ? 君にとってはそのための結婚でもあるんだろう」
「……はい……」
卓巳の言葉は思いやり深いものだが、声は出会ったころと同じく冷たい。それに、万里子のほうを見ようともしなかった。
その理由が、卓巳の万里子に対する思いに、信じられないほどの変化が生じた結果だとは思いもしない。
万里子は額面どおりに受け取り、落ち込んでいた。
メロディの合間にベッドの軋む音が聞こえ、唐突に静寂が訪れた。卓巳がCDを止めたのだ。それに気づき、万里子も慌てて起き上がる。
卓巳は万里子のいるベッドには戻って来ず、そのままラウンドチェアに腰を下ろした。
「君用に、同じダブルベッドを作らせている。納品までに二週間はかかるそうだ」
「こんなに大きくなくても。ひとりで寝るんですから」
「広い部屋なんだ、気にすることもないだろう。奥のウォークインクローゼットにも君のスペースを増築中だ。他に何か希望はあるか?」
「花嫁道具はどうしましょう? 父はきちんと揃えたいようなんですが……」
「必要なら揃えればいい。だが、お父上にも夢があるだろう。叶えてあげればどうだ? 君にとってはそのための結婚でもあるんだろう」
「……はい……」
卓巳の言葉は思いやり深いものだが、声は出会ったころと同じく冷たい。それに、万里子のほうを見ようともしなかった。
その理由が、卓巳の万里子に対する思いに、信じられないほどの変化が生じた結果だとは思いもしない。
万里子は額面どおりに受け取り、落ち込んでいた。