愛を教えて
(この人も、触れられたくない傷を抱えているのかもしれない……)
万里子はそんなふうに感じたことを思い出す。
卓巳は妊娠や中絶といった言葉に過敏に反応する。
きっと彼の心を苛む傷に関係することなのだ。
もし、そうであるなら……彼のことを心から思っても、どれだけ尽くしても、万里子が愛されることはない。
万里子が何度目かのため息をついたとき、卓巳のほうから話しかけてくれた。
「さっきは、驚いただろう? 僕が施設で育ったと聞いて」
彼の声から冷たさは少し和らいでいた。
万里子は気を取り直し、卓巳に向かって微笑む。
「はい。こちらのお邸で、お育ちになったんだとばかり思っていましたので」
「この際だ。僕の育ってきた環境を話しておこう。聞いてくれるかな?」
「はい。私でよければ」
好きな人のことならなんでも知りたい。
万里子はそんな軽い気持ちで返事をした。
でもそれは、雑誌やインターネットで目にする、貴公子然とした卓巳の姿からは、とても想像できない生い立ちで……。
万里子はそんなふうに感じたことを思い出す。
卓巳は妊娠や中絶といった言葉に過敏に反応する。
きっと彼の心を苛む傷に関係することなのだ。
もし、そうであるなら……彼のことを心から思っても、どれだけ尽くしても、万里子が愛されることはない。
万里子が何度目かのため息をついたとき、卓巳のほうから話しかけてくれた。
「さっきは、驚いただろう? 僕が施設で育ったと聞いて」
彼の声から冷たさは少し和らいでいた。
万里子は気を取り直し、卓巳に向かって微笑む。
「はい。こちらのお邸で、お育ちになったんだとばかり思っていましたので」
「この際だ。僕の育ってきた環境を話しておこう。聞いてくれるかな?」
「はい。私でよければ」
好きな人のことならなんでも知りたい。
万里子はそんな軽い気持ちで返事をした。
でもそれは、雑誌やインターネットで目にする、貴公子然とした卓巳の姿からは、とても想像できない生い立ちで……。