愛を教えて
「君は馬鹿じゃない。だから気づいたはずだ。あの食堂で繰り広げられていた、白々しい仲良しごっこを。会社が軌道に乗れば、僕はまた捨てられるかもしれないな」
「でも、おばあ様は卓巳さんの幸せを願って……」
「だといいが。そうでなければ、僕はまた何もかも失う」
「いくらかは法律で卓巳さんの手元に残るんでしょう? 何もかもなんて……ここまで頑張ってこられたのに」
「いや、手に入れるならすべてだ。太一郎の下で働くくらいなら、僕はここを出る! 元々何も持ってはいなかったんだ。また始めるさ」
卓巳は強い。
だから、平気でゼロに戻ることもできるし、新しく始めることもできる。
ひとつのことに執着もしない。卓巳の叔母たちはきっとそんな彼が怖いのだろう。
それに、あれほど辛い過去を語りながら、誰かを口汚く罵ることはなかった。
祖父母や両親のことも、義理の父親も、誰かのせいで自分が酷い目に遭ってきたとは決して言わない。
乗り越えた強さを誇りに換えることのできる人間。
それだけでも、卓巳は尊敬に値する人物だ。
「でも、おばあ様は卓巳さんの幸せを願って……」
「だといいが。そうでなければ、僕はまた何もかも失う」
「いくらかは法律で卓巳さんの手元に残るんでしょう? 何もかもなんて……ここまで頑張ってこられたのに」
「いや、手に入れるならすべてだ。太一郎の下で働くくらいなら、僕はここを出る! 元々何も持ってはいなかったんだ。また始めるさ」
卓巳は強い。
だから、平気でゼロに戻ることもできるし、新しく始めることもできる。
ひとつのことに執着もしない。卓巳の叔母たちはきっとそんな彼が怖いのだろう。
それに、あれほど辛い過去を語りながら、誰かを口汚く罵ることはなかった。
祖父母や両親のことも、義理の父親も、誰かのせいで自分が酷い目に遭ってきたとは決して言わない。
乗り越えた強さを誇りに換えることのできる人間。
それだけでも、卓巳は尊敬に値する人物だ。