愛を教えて
広大な庭には一面にビッシリと芝生が植えられ、遠目には緑の絨毯に見えた。
近づけば、黄色くなったものもチラホラとある。もうすぐ十一月、気温が下がれば仕方のないことだろう。
先ほどまではガーデンルームから見ていた裏庭を、卓巳と万里子は皐月の車椅子を押して散策していた。
「どうしました? 卓巳さん」
「いえ……どうして、あの報告書をお持ちだったのかと思いまして」
「みんなの前で言ったとおりです。沖倉先生にお願いして、もらって来ていただいたのですよ」
卓巳は何も答えなかった。
そして、開きかけてはまた閉じる、を繰り返している。
万里子はそんな卓巳の様子に気づき、気を利かして席を外そうとした。
だが、そのたびに太一郎の影が頭をかすめる。太一郎はこの邸の中にいるのだ。万里子は卓巳のそばから離れるのが怖かった。
近づけば、黄色くなったものもチラホラとある。もうすぐ十一月、気温が下がれば仕方のないことだろう。
先ほどまではガーデンルームから見ていた裏庭を、卓巳と万里子は皐月の車椅子を押して散策していた。
「どうしました? 卓巳さん」
「いえ……どうして、あの報告書をお持ちだったのかと思いまして」
「みんなの前で言ったとおりです。沖倉先生にお願いして、もらって来ていただいたのですよ」
卓巳は何も答えなかった。
そして、開きかけてはまた閉じる、を繰り返している。
万里子はそんな卓巳の様子に気づき、気を利かして席を外そうとした。
だが、そのたびに太一郎の影が頭をかすめる。太一郎はこの邸の中にいるのだ。万里子は卓巳のそばから離れるのが怖かった。