愛を教えて
卓巳は逆光を背に佇んでいた。
昼間に比べ、上品かつ華やかな装いだ。下ろしていた前髪も、きっちり後ろに流している。
卓巳の隣には弘樹も立っていた。彼もエリートで出世頭のはずだ。だが、そんな弘樹が霞むほどの威厳を卓巳は漂わせていた。
万里子の脳裏に『氷のプリンス』の異名が思い浮かぶ。
少しずつ、卓巳は万里子に近づいてきた。
昼間と違い、今は落ちついた気持ちで卓巳を見ることができる。それで気がついたのだ。
卓巳の瞳はとても綺麗だ、と。
金で妻を買うような男性には思えない。汚れを知らない幼子と同じくらい透き通って見える。それが万里子には不思議でならない。
「……ちゃん。マリちゃん?」
万里子はハッとした。
弘樹に大きな声で呼ばれるまで、卓巳の姿に見惚れていたらしい。
「はじめまして。千早万里子さんですね。僕の顔に何か付いてますか?」
「い、いえ。あの……は、はじめまして」
卓巳は万里子に手を差し出し、昼間の話が嘘のように優しく微笑んだ。
毅然とした態度を取るつもりが、万里子は出鼻を挫かれてしまう。
昼間に比べ、上品かつ華やかな装いだ。下ろしていた前髪も、きっちり後ろに流している。
卓巳の隣には弘樹も立っていた。彼もエリートで出世頭のはずだ。だが、そんな弘樹が霞むほどの威厳を卓巳は漂わせていた。
万里子の脳裏に『氷のプリンス』の異名が思い浮かぶ。
少しずつ、卓巳は万里子に近づいてきた。
昼間と違い、今は落ちついた気持ちで卓巳を見ることができる。それで気がついたのだ。
卓巳の瞳はとても綺麗だ、と。
金で妻を買うような男性には思えない。汚れを知らない幼子と同じくらい透き通って見える。それが万里子には不思議でならない。
「……ちゃん。マリちゃん?」
万里子はハッとした。
弘樹に大きな声で呼ばれるまで、卓巳の姿に見惚れていたらしい。
「はじめまして。千早万里子さんですね。僕の顔に何か付いてますか?」
「い、いえ。あの……は、はじめまして」
卓巳は万里子に手を差し出し、昼間の話が嘘のように優しく微笑んだ。
毅然とした態度を取るつもりが、万里子は出鼻を挫かれてしまう。