愛を教えて
挙式二日前、卓巳は初めて、万里子の家に泊まることになる。
万里子はすでに、戸籍上は卓巳の妻。
それは、ひとり娘を嫁に出す父親としては、さぞや複雑な心境だろう。
しかも、父親の神経を逆撫でするかのように、卓巳は万里子をホテルのオーナーズ・スイートに泊め、帰そうとしない。
万里子もまた、卓巳の誘いを断ることができなかった。
だが、さすがに、明後日が結婚式となれば家に帰さない訳にはいかない。
卓巳は万里子を家まで送り、隆太郎に日頃の非礼を詫びた。
「いや、卓巳くん。確かにね、嫁にやるとは言いました。もう入籍してるんだから、法律上はすでにあなたの妻です。だが、万里子は妻の忘れ形見ですよ。二十二歳まで、大事に育ててきた私の宝なんだ!」
求婚のとき、卓巳が土下座をしたリビングである。
あの日と同じ、年季の入ったジャガード織のソファに、彼らは腰かけていた。
象嵌入りの天板にはウイスキーボトルとグラスが二個。だが、飲んでいるのは圧倒的に隆太郎のほうだ。
「はい。おっしゃるとおりです。本当に申し訳ありません」
「もう、お父様ったら酔ってしまって。卓巳さんに失礼なことばかり……」
アイスペールに氷を入れて、万里子はキッチンから戻って来た。
「なんだ、万里子。お前は私の娘なんだぞ。父親より卓巳くんを庇うのか? なんて薄情な娘なんだ」
万里子はすでに、戸籍上は卓巳の妻。
それは、ひとり娘を嫁に出す父親としては、さぞや複雑な心境だろう。
しかも、父親の神経を逆撫でするかのように、卓巳は万里子をホテルのオーナーズ・スイートに泊め、帰そうとしない。
万里子もまた、卓巳の誘いを断ることができなかった。
だが、さすがに、明後日が結婚式となれば家に帰さない訳にはいかない。
卓巳は万里子を家まで送り、隆太郎に日頃の非礼を詫びた。
「いや、卓巳くん。確かにね、嫁にやるとは言いました。もう入籍してるんだから、法律上はすでにあなたの妻です。だが、万里子は妻の忘れ形見ですよ。二十二歳まで、大事に育ててきた私の宝なんだ!」
求婚のとき、卓巳が土下座をしたリビングである。
あの日と同じ、年季の入ったジャガード織のソファに、彼らは腰かけていた。
象嵌入りの天板にはウイスキーボトルとグラスが二個。だが、飲んでいるのは圧倒的に隆太郎のほうだ。
「はい。おっしゃるとおりです。本当に申し訳ありません」
「もう、お父様ったら酔ってしまって。卓巳さんに失礼なことばかり……」
アイスペールに氷を入れて、万里子はキッチンから戻って来た。
「なんだ、万里子。お前は私の娘なんだぞ。父親より卓巳くんを庇うのか? なんて薄情な娘なんだ」