愛を教えて

(3)心の距離

「明日よ、明日! 卓巳とあの女の結婚式は!」


あずさはベッドの上に転がり、煙草をくゆらせた。そして、不愉快極まりないといった声で叫ぶ。


「しかも、もう“若奥様”だなんて!」

「おいおい……まさか、自分が卓巳に選ばれると思ってた訳じゃないよな?」


あずさの横に太一郎が転がっている。
なんだかんだ言っても、このふたりはまだ切れてない。まさにセックスだけの関係。卓巳がこの世で最も嫌悪する関係だった。


「そんなこと考えちゃいないわ。ただ……」


万里子はただの偽善者だ。
入籍の翌日、わざわざあずさの元にやって来た。

急に入籍が決まったので、あずさのことを卓巳に話した。卓巳はあずさとの関係を否定したから、彼を信じようと思っている、と。


(何よっ! そんなこと言われなくてもわかってるわよっ!)


卓巳にも……今度、あんなデタラメを吹聴したときは、誰が反対してもこの邸から叩き出す、と宣告された。


イライラするあずさの身体に、太一郎の指が伸びる。彼女の胸を背後から鷲づかみにして、太一郎はせせら笑った。


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