愛を教えて
（いや、優しい万里子のことだから、誰とでも合わせるんだろうな……）


卓巳は万里子のことを考え始めると、どうにも頬が緩む。


「あの……似合ってませんか？」


黙り込む卓巳に、万里子は不安気な声で尋ねる。
そして、卓巳が口を開く前に、　


「まあ、とんでもありませんわ。世界一の花嫁様ですわ、万里子様」


メイド頭の千代子が答えた。


「ええ、それはもう、お美しいです。本当にお嬢様がお幸せそうで……わたくし、感激で涙が止まりません」


千早家の家政婦、忍も答えながら目元を拭った。


「あらあら、忍さん。万里子様はもうお嬢様ではありませんわ。若奥様ですもの」

「そうでしたね。失礼いたしました。もう、小さなお嬢様ではないのですね」


年齢はひと回りほど離れている千代子と忍だが、ふたりとも主人の佳き日が嬉しくて仕方がないらしい。
顔を見合わせては、大声でからからと笑っている。　

しかし、そんなふたりはまるで目に入らない様子で、卓巳はひたすら万里子を見つめていた。


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