愛を教えて
そんな万里子が生まれて初めて人を愛したのだ。
その愛する人を瞳に焼き付けたくて、卓巳を見つめるようになる。しだいに、目が合うと卓巳も微笑み返してくれ……。

だが、卓巳はあの悪魔と同じことを言った。

万里子が誘った、と。


(キスは……卓巳さんが望んだ訳じゃなかった)


万里子はずっと悩んでいた。

あんな目に遭ったのは自分のせいではないか、と。自分の行いに問題があって、酷い目に遭わされたのかもしれない。

そんな万里子の苦悩に、卓巳の言葉は決定打となる。


(私は、知らないうちに男の人を誘っていたのね。何もかも、すべて私のせいだったなんて)


『誰よりも幸せな花嫁にしてやる』


卓巳の言葉は、万里子の涙でひとつずつ崩れて行く……砂の城であった。


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