愛を教えて
(僕が……間違えたんだ)


『そんな目で見るなっ! 男を誘うような……物欲しげな目をするなっ!』


言うべき言葉を間違えた。

俊介に優しい目を向けるな、と言いたかった。
その目は全部、自分に向けてくれ、と。卓巳以外の男を、憧れのまなざしで見て欲しくない。
本当は笑顔も禁じたいくらいだ。
万里子を閉じ込めて、自分だけのものにしたい。『僕の妻だ!』と何度も叫びたかった。


あの日から、万里子は卓巳を一切見ない。
笑顔を向けてくれるのは、祖母の傍らにいるときだけだ。

万里子の心を突き放したばかりに、彼女の瞳は卓巳を映さなくなった。


だが、閉じこもった寝室から、時々、彼女の押し殺した声が聞こえる。




新婚三日目の夜、最初にその呻き声に気づいたとき、卓巳は心配になり部屋に駆け込んだ。


『どうした、万里子! 何があった? 僕にできることならなんでもするから言ってくれ』


名誉挽回のチャンスが欲しい。もう一度、万里子の騎士になりたかった。

しかし……。


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