愛を教えて
「メイドの中では雪音くんのことを気に入ってるんだ。今夜ベッドに呼んでも構わないだろう?」

「止めてください! 雪音さんは遊びでそんなことをされる方じゃありません。使用人だからと、そんな扱いをされるなら、あなたも太一郎さんと同じですね」


万里子の言うとおりだ。
正論だけに卓巳の怒りは理不尽にも万里子に向かう。


「随分、生意気な口を利くじゃないか。遊びだろうが本気だろうが、男と女のすることはひとつだ! そんなこと、君が一番よく知ってるじゃないか。それとも、四年前に自分がやったことを忘れたのか?」


卓巳は自分が何を口走っているのか、よくわからなくなっていた。


「君は遊びで男と寝たんだ。本気なら、子供を堕ろしたりはしないはずだ。違うか?」


万里子の瞳に後悔の色が走る。


「もう……四年前のことは言わないで。お願い……わかっています、全部私のせいだって。私が誘ったの……でも、知らなかったんです。あれが誘惑だなんて、あんなことをされるなんて……思わなかった。本当です」


――万里子から誘った。


その言葉に、卓巳の暴言はいよいよ止まらなくなる。


< 312 / 927 >

この作品をシェア

pagetop