愛を教えて
「やっぱりそうか。僕はとんでもない女を妻にしたものだ! 君は自分のやったことがわかってるのか? 妻のいる男に迫って関係を持ったんだ。恥ずかしくはないのか!?」


万里子はふいに顔を上げ、卓巳を見つめた。


「待って……お願い、待ってください。妻って何のことですか? 私は……知りません。どうして卓巳さんにそんなことがわかるんですか?」

「何が知らないだ。白々しいにも程がある。君は結婚式にも出たんだろう? 妻の顔まで知りながら、よくそんな真似ができたものだ。とんだ恥知らずだな」

「なんのこと? いったい、誰のことを言ってるんですか?」



万里子はやっと、卓巳との会話に微妙なずれが生じていることに気づき始めた。

だが、卓巳が中絶同意書を手にしていることも、それに俊介の名前が書かれてあることも知らない。

そして、怒りに理性を失っている卓巳は、万里子の表情が変わったことすら気づけなかった。



「しらばっくれるな。なぜ、結婚式に呼んだ? 僕は君が彼に捨てられたんだと思ってた。だから、黙ってたんだ。それを……過去に妻を妊娠させ子供まで堕ろさせた男から、結婚祝いの言葉なんぞ聞きたくもない!」

「ひょっとして……俊介さんのことを言ってるの? 違いますっ! 彼はそんな人じゃありません。誠実な人です」

「誠実が聞いて呆れる。中学教師が女子高生に手を出し、妊娠させた過去が明らかになればクビだな」

「馬鹿なことを言わないで! 違います、俊介さんはそんな人じゃありません。妻がいながら、他の女性と関係するような人じゃ……あなたとは違うわ!」


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