愛を教えて
「俊介さんじゃありません！　私はどんなに愛していても、その方に奥様がいれば諦めます。もし、誘われたとしても、ついて行くような真似はしません。信じてください、俊介さんじゃありません。でも……どうしてそんな」


万里子は何がどうなればそこに俊介の名前が出てくるのか、訳がわからないと叫ぶ。
困惑する万里子に、卓巳は順を追って説明した。


「子供を堕ろすのに中絶同意書が必要なのは知ってるね」

「……はい。子供の父親か、保護者の同意が必要だと」

「では、その同意書に名前と判があれば……その男が父親だと思って当然だろう？」

「え？　じゃあ同意書に俊介さんの名前が書いてあったんですか！？」


万里子の瞳孔が一瞬で開いた。
本気で驚く万里子に、卓巳のほうが戸惑う。　


「おいおい、君が出したんじゃないのか？　いったいどうなってるんだ」

「あれは忍が……すべて手配するから心配はいらないと言ってくれて。じゃあ、忍が俊介さんの名前を？　どうしてそんな……人に知れたら、俊介さんにご迷惑がかかるのに」


卓巳はいよいよ自分の見当違いを悟った。
更には、最悪の予感まで当たりそうだ。

もしそうなら――。


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