愛を教えて
「はい。その娘に太一郎様が無体な真似をなさいまして」

「またか! 代議士の娘に手を出したときに言ったはずだ。次は自分で責任を取ってもらう、と。十七なら合意の上でも条例違反だ。合意がなければ暴行傷害でも強姦致傷でも構わん、警察に突き出せ!」


太一郎は非常に危険な存在だ。
卓巳たちの部屋には誰も不正な手段で踏み入れないように、センサーが取り付けられている。それは二十四時間、警備室直通だ。
雪音にも、昼間であっても注意を怠らず、万里子から離れないように頼んであった。

だが、太一郎が問題を起こしたのなら幸いである。
理由はなんであれ、この邸から叩き出す口実になる。


(その娘には気の毒だが……)


卓巳が後ろめたさを覚えたそのとき、


「いえ、それが……彼女の助けを呼ぶ声に奥様が気づかれまして。その娘は事なきを得たのですが……。代わりに奥様が」


浮島の言葉に卓巳の顔色は変わった。


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