愛を教えて
「許す?」


卓巳の怒りは尚子の言葉を聞き、沈静に向かうどころか、逆に燃え上がった。

そして、媚びた笑いを浮かべる尚子に、卓巳は辛辣かつ凶悪な台詞を返す。


「いいですよ。だが、彼は数々の犯罪を重ねてきた。私はその証拠を山と抱えている。彼にはその責任を取って別荘で暮らしていただきましょう。そしてあなた方にも、息子を犯罪者に育てた責任を取ってもらいましょうか?」

「せ、責任? そんなこと」


別荘が刑務所であることは、太一郎にもすぐにわかった。
同じようにわかったのか、尚子と敦も黙り込む。そんなふたりに卓巳は怒声を浴びせた。


「貴様らの口座はすぐさま凍結する。何も持たずにこの家から出て行け。藤原の庇護から離れて、生きていけるものならやってみろ! それとも……留学先で失踪した息子を持つほうがいいか。さあ、選べ!」


重苦しい無言の時間が流れた。


再び卓巳が足を動かしたとき、太一郎は両親の顔を見る。

彼らの出した答えは……。


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