愛を教えて
太一郎は膝から崩れ落ち、床を這うように逃げるが……卓巳は容赦なく、太一郎の足を踏みつけ、腰を蹴り飛ばした。


駆けつけた使用人たちは全員が棒立ちとなり、鬼神の如く、鉄槌を下す卓巳を見つめている。


「立て。まだ終わりじゃないぞ」

「た……のむ、許してくれ……もう、カンベンしてくれよ。助けて……」

「そうか、貴様でも殴られると痛いんだな。だが、貴様はその手で万里子を殴った。それが、どれほどの痛みかわかるかっ!」

「わかった……もう、許してくれ……よくわかったから、だから」

「万里子もそう言わなかったか? 助けてくれと頼まなかったか? 彼女だけじゃない。お前が今まで殴りつけた女も、泣いて頼んだんじゃないのか!? お前は一度でも許してやったのか。そんな女を、殴り倒して、最後まで犯したんじゃないのかっ!」


卓巳の怒りは邸中を震撼させた。
それは目の前にいる太一郎だけでなく、四年前、万里子を襲った連中に向けた怒りだった。


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