愛を教えて
だが、秘書の宗が語った内容は更に驚くべきものであった。


まず、万里子が背負うべき義務が言い上げられた――。

一、婚姻中は藤原本邸で同室による同居、寝室も同じ(ベッドは別)。

二、婚姻中はいかなる場合も夫に従い、家族・従業員を問わず、人前では仲の良い夫婦でいること――等々。

延々十数項目にわたり、細かく書かれてある。


それに引き替え、卓巳が背負うべき義務は――。

『千早物産が必要とされる融資は、銀行を通じて制限なく行われるように取り計らうこと』

『婚姻中は万里子を妻として尊重し、生活の維持と学費の提供には上限を設けないこと』

この二点だけ。


そのうえ、別項として、

『万里子は卓巳の交遊関係に一切不満を唱える権利を持たない』

といった、契約書は不公平極まりないものだった。


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