愛を教えて
挙げ句の果てに、万里子を守れなかった苛立ちを“正義”とすり替え、太一郎にぶつけた。


(高潔も何もない。騎士《ナイト》気取りが聞いて呆れる……)


「わかった。太一郎、殴ったことは謝る、すまなかった。だが、君が万里子や佐伯くんにしたことは傷害と強姦未遂だ。訴えられたら、君は自分自身で償うんだ」


次はないと言いながら、面倒を避けるために金で解決し続けた。
太一郎の更生など、真剣に考えたこともなかった。


「私に殴られたと訴え出るのも君の自由だ。だが、君が万里子にしたことは、たとえ彼女が許しても、私は許さない。それだけは忘れるな」


卓巳は裸足の万里子を抱き上げると、母屋に向かって歩き出す。

藤原邸は張り詰めた緊張感から、ようやく解放されたのだった。


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