愛を教えて
卓巳は世間の評判などまるで気にしないといった感じだ。離婚原因を自分のせいにするだけまし、と評価するべきか。


「別項は他にもありますね。契約期間中にあなたが他の女性との結婚を望まれたとき、私は問答無用で追い出されることになります」


別項の三に書いてあったのは『契約の早期解除を求める権利は卓巳側にある』であった。

おまけに、万里子が不貞を働いた場合、契約は即刻解除となる。当然、千早物産への融資は打ち切られ、慰謝料まで払わなくてはならない。

しかも、その不貞の判断が実に曖昧なものだった。


「私の不貞と言うのはあなたが判断されるのでしょう? たとえば、そちらの宗さんとこの部屋に居ただけでも、あなたが不貞だと言えば、そうなってしまいますよね?」


矢継ぎ早の質問に、卓巳だけでなく宗も言葉を失っている。

そんな男性ふたりを横目で見ながら、万里子は別項の二に書かれた一文を読み、怒りに手が震えた。


卓巳が口頭で約束したように、卓巳から一切の性的交渉は要求しない、とあったが――。


『万里子が卓巳との性交渉を希望した場合、卓巳が応じても契約違反にはあたらない』


そう書かれてあった。


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