愛を教えて
卓巳の問いに、万里子は夜目にも薄っすらと頬を染めて答えた。


「胸を、見られたんです。それに、指先が少し……む、胸に触れて」


その声は震えていた。加えて、戸惑いながら告白する万里子の声はどうにも艶めかしい。

卓巳の心拍と血圧は一気上昇する。

そのせいか、卓巳は正気とは思えない言葉を口にした。


「僕にも……見せて欲しい」


卓巳はすぐさま後悔したが、あとの祭りである。

万里子の右手が卓巳のパジャマの袖を掴み、左手が胸辺りに触れた。

卓巳は、そのまま突き飛ばされるのを覚悟する。


深夜の寝室にふたつの呼吸音だけが響いた。


張り詰めた緊張がベッドを包み込む。そして、それを打ち消すように、万里子はゆっくりとうなずいた。


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